PyTorchとCUDA Toolkitの依存関係とインストール方法、CUDA ToolkitとCompute Capabilityの対応などを紹介します。
PyTorchとCUDA Toolkitについて
PyTorchは、深層学習のためのオープンソースの機械学習ライブラリです。GPUによる高速な計算をサポートしており、NVIDIA製GPUを使用する場合は、CUDA Toolkitのインストールが必要になります。
Compute Capabilityの確認
まず最初に、使用するグラフィックボードが対応しているCUDA Toolkitのバージョンを確認しましょう。以下のリンクから、ご使用のGPUのCompute Capabilityを調べてください。これは、NVIDIA製GPUの機能や性能に関する指標です。
CUDA ToolkitとCompute Capabilityの対応表
CUDA Toolkitには、対応しているCompute Capabilityの範囲があるため、事前に確認してください。例えば、Ampereアーキテクチャを採用しているRTX 30シリーズは、Compute Capabilityが8.6であり、CUDA Toolkitのバージョン11.1から12.8までに対応しています。
CUDA Toolkit | Kepler (late) | Maxwell | Pascal | Volta | Turing | Ampere | Ada Lovelace | Hopper | Blackwell |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11.0 | 3.5 | 8.0 | |||||||
11.1 – 11.4 | 3.5 | 8.6 | |||||||
11.5 – 11.7.1 | 3.5 | 8.7 | |||||||
11.8 | 3.5 | 8.9 | 9.0 | ||||||
12.0 – 12.6 | 5.0 | 9.0 | |||||||
12.8 | 5.0 | 12.0 |
PyTorchのインストール
次に、PyTorchのインストールについて説明します。PyTorchには、対応するCUDAランタイムライブラリがバージョンごとにバンドルされています。以下のリンクにアクセスして、お使いの環境に適したPyTorchとCUDAの組み合わせを選んでください。

インストールしたいPyTorchのバージョンを探します。Conda(condaを使用)またはWheel(pipを使用)のいずれかの方法で、表示されているインストール用コマンドを実行することで、PyTorchをインストールできます。
CUDA Toolkitのインストール (Windows)
CUDA Toolkitのダウンロード
以下のリンクから確認したCUDA Toolkitのバージョンをダウンロードします。

環境を選択していきDownloadをクリックしてください。Installer Typeの違いは、localはすべてのコンポーネントが含まれており、networkはインストール時に選択したパッケージのみダウンロードします。
インストールオプション
ダウンロードしたインストーラを実行してください。CUDA ToolkitインストーラにはNVIDIAグラフィックドライバなども含まれているため確認が必要です。

インストールオプションでカスタムを選択してください。

CUDAのインストーラーには、CUDA本体以外にもさまざまなコンポーネントが含まれています。、ディスプレイドライバが現在のバージョンより古い場合、自動的にダウングレードされてしまうことがあるため注意が必要です。不要なコンポーネントは、事前にチェックを外しておきましょう。

サポートされているVisual Studioのバージョンが見つからない場合、このような画面が表示されます。このままインストールを続けることもできますが、インストールに失敗する場合やVisual Studioを利用しない場合は、「Visual Studio Integration」のチェックを外してインストールを進めてください。
CUDA Toolkitのインストール (Linux)
CUDA Toolkitのインストール
確認したCUDA Toolkitのバージョンを選択します。

環境を選択していきますが、Installer Typeでは (RPM/deb) を推奨されていますのでそちらを選んでください。
あとは表示されたコマンドを実行するだけですが、最後の行のsudo apt-get -y install cudaでは最新のバージョンがインストールされてしまいます。以下を参考に指定してください。
メタパッケージ | 目的 |
---|---|
cuda | すべてのCUDAツールキットとドライバーパッケージをインストールします。新しいバージョンのアップグレードに対応します。 |
cuda-11-8 | すべてのCUDAツールキットとドライバーパッケージをインストールします。指定されたバージョンがインストールされます。 |
cuda-toolkit | すべてのCUDAツールキットをインストールしますがドライバは含まれません。新しいバージョンのアップグレードに対応します。 |
cuda-toolkit-11-8 | すべてのCUDAツールキットをインストールしますがドライバは含まれません。指定されたバージョンがインストールされます。 |
cuda-drivers | すべてのドライバーパッケージをインストールします。新しいバージョンのアップグレードに対応します。 |
環境変数の設定
CUDA ToolkitのPATHとLD_LIBRARY_PATHを設定します。以下はCUDA 11.8の例です。バージョンに合わせて数字を変更してください。この設定は、現在のターミナルセッションのみ有効です。ターミナルを閉じるとリセットされるため、毎回手動で設定が必要です。
export PATH=/usr/local/cuda-11.8/bin${PATH:+:${PATH}}
export LD_LIBRARY_PATH=/usr/local/cuda-11.8/lib64${LD_LIBRARY_PATH:+:${LD_LIBRARY_PATH}}
毎回の手動設定が面倒な場合は、~/.bashrc に追記しておくと、ターミナルを開くたびに自動で読み込まれます。
echo 'export PATH=/usr/local/cuda-11.8/bin${PATH:+:${PATH}}' >> ~/.bashrc
echo 'export LD_LIBRARY_PATH=/usr/local/cuda-11.8/lib64${LD_LIBRARY_PATH:+:${LD_LIBRARY_PATH}}' >> ~/.bashrc
source ~/.bashrc